南の島だから肌の色のどちかというと濃い人たち?それともアメリカ圏なのでいわゆるアメリカ本土と似たような方たち?またはアジアにとても近いので、アジアっぽい顔立ちの人々でしょうか?
以前も少しお伝えしたことがありますが、グアムには先住民族であるチャモロ人のほかに、さまざまな人種、民族の方たちが住んでいます。その内訳は資料によっていろいろと違ったりするのですが、Wikipediaの情報を参考にすると、チャモロ人47%、フィリピン人25%、白人10%、中国人、日本人、韓国人、その他18% (スペイン統治時代にチャモロ人とスペイン人の混血化が進み、現在純粋なチャモロ人は存在しない)とされています。
このグアムの先住民であるチャモロ人は文字をもたなかったため、その歴史は謎に包まれていますが、紀元前3000~2000年くらいにフィリピン、インドネシアなどを経由してきた東南アジア系人種が祖先であるというのが定説のようです(グアム政府観光局ウェブサイトより)。
ところが先日の『Liberation Day(グアム解放記念日)』の記事に簡単に書きましたが、グアムは1521年にマゼランによって発見され、1565年にスペイン王国の領地と宣言されてから、ずっとスペイン、アメリカ、日本のいずれかの国の支配を受け、先住民族チャモロ人は苦難の時代を過ごしたといわれています。
そのためかグアムのチャモロ人は、グアムがモチーフの25セント硬貨にもそう記されているように、“Guåhan Tånó I Man Chamorro (グアム−チャモロ人の土地)”という意識をとても強く持っていて、グアム政府の要職や力のある企業の名誉職などはチャモロ人でないとなかなか就くことができないといわれています。
アメリカではつい先日ハーバード大学黒人教授が白人警官に誤って逮捕されたことにオバマ大統領がアメリカの人種差別について踏み込んだ発言をした事件で物議をかもしました。これに比べ、グアムでは先日白人アメリカ人の元教師が、チャモロの同僚教師たちに白人であることを理由に嫌がらせを受け上司に相談したところ、改善されるどころか公立学校協会と一緒に退職を迫られたと、公立学校協会を相手取り2万ドル(約200万円)を要求する訴訟を起こすできごとがありました。
また白人ニュージーランド人と結婚しているフィリピン人の知人が、夜中に車から爆音を発しているチャモロ人の若者たちに音を小さくするように注意したところ、『Go home!(国に帰れ!)』といわれたことで憤慨していたり、グアムの小学校で日本語教師をしている友人は、クラスでの民族による仲間割れ、特にチャモロ人のプライドの高さが子供たちの間でも問題を起こすことが多いと嘆いていたりしました。
とはいえ最近復興の努力がされるようになってきたとは言うものの、チャモロ人の多くがチャモロ語を忘れて英語を話し、アメリカの準州であることに満足しているというのは、なんとも不思議なねじれ構造のようにも思います。
いずれにしても、16世紀から他国による支配を受けているとはいえ、先住民族であるチャモロ人がいまだにグアム島で権力とプライドを持っているということは、世界的によく見られる人種差別などに比べてずっと正常なことだといえるかもしれません。
でもさまざまな人種や民族が共生する土地で、このような差別問題が起きてしまうということは、やはりとても残念なことだとも思います。先住民族の存在や文化を尊重しつつ、さまざまな民族がこの小さな島で平和に共存できたらと思ってしまうのは、私が戦争を知らない日本人だからでしょうか?
*『地球の歩き方』グアム特派員記事はこちらで。
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