オバマ大統領が訴えているアメリカの医療保険改革がとても話題になっています。
やらせだとか、真実ではないといわれていたりはしますが、マイケル・ムーア監督の映画『Sicko(シッコ)』でもアメリカの医療保険システムの問題が描かれているように、民間の保険会社の保険に任意で入るしかないアメリカの医療保険制度は大変問題といわれています。
国民皆保険の日本で生まれ育ち、多額な税金と引き換えに社会保障が整っているといわれるフランス、住人に無料で医療が提供される代わりにその質がひどいと言われるイギリスで数年を過ごした経験からすると、アメリカの(グアムの)医療享受環境はなかでも特に改革すべき状態だと思います。
さて、政府が運営する国民皆保険がないアメリカでは、任意で民間の保険会社の提供する多様なプランの中から好きなものを選ぶのですが、これがとてもとても複雑。
感じとしては生命保険を選ぶような感じで、複数の保険会社のプランを組み合わせたり、ひとつの会社の中から選んだりすることもできるのですが、この病気の場合はあちらのほうがお得で、出産だったらあちらのほうがいいかも…など、とても迷ってしまいます。確かに、ひとりひとりの経済的、身体的状況にあわせて保険を選ぶことができるといえば聞こえはいいですが、そのあまりに高い保険料のために、グアムでは島民の30%しか保険に入っていないといわれています(Kuam.comより)。
たとえば出産だけとってみても、駐在員で会社が保険料を負担してくれている友人の場合、出産のために産婦人科、エコー撮影をするラジオロジーや血液検査のためのラボに通った場合にかかる診察料や検査代などは、1回たったの10ドル。また出産時(普通分娩の場合)に支払う金額は100ドルなので、妊娠期間中に必要な金額を多めに見積もっても、本人負担分は400ドル。一方、中小企業のオーナーで保険に加入しないまま妊娠した友人の場合、彼女の担当医のクリニックでは出産できず、GMH(グアム・メモリアル・ホスピタル)で出産するため、普通分娩でも担当医に検診代と助産代として2800ドル、GMH(グアム・メモリアル・ホスピタル)に2500ドル、他に病院外での検査代など含めて大体6000ドルほどかかるよう。
確かに民間会社の保険は毎月とても高く(夫婦ふたりのわが家では平均的な料金のプランに加入していて、ふたりで毎月500ドルくらい)、しかも出産までカバーするためには妊娠前に加入していないといけないので、最低でも妊娠期間中500ドル×10ヶ月=5000ドル支払っていると思えば、保険に加入していてもいなくても大して変わらないか、もしくは無保険より支払い総額は多いかもしれないですが、それでもいざというときに、医療にかかろうと思えるかどうかという点で、とても違うと思います。
さらにアメリカは基本的に主治医制をとっているので、まずは主治医にかかり、その診断で専門医にかかるというシステムになっているのに、ちょっと体調が悪いくらいでも場合によっては病院ふたつ分の診察料を払わなければいけなくなります。これを保険でカバーしようと思った場合、各病院に提携保険会社があり、自分の加盟している保険会社と病院の提携保険会社が違えば、無保険とまったく同じ。
また同じ保険会社でも、州ごとにカバーできるかできないかが決まっています。たとえばハワイからグアムに駐在しているご家族は、より医療設備が整っているハワイ州をカバーする保険料を支払っているので、グアムでは無保険。小さなお子さんがいらっしゃって、突発的に熱を出したりされるようなのですが、医療費がとてもかかってしまうので、基本的にグアムではなるべく病院に行かないとか。
そこでオバマ大統領は現在の民間保険会社による医療保険制度を改革し、政府によるよりシンプルで、患者さんが本当に必要な医療を受けられる体勢を作ろうといっているのですが、これはグアムでは大きな政治的問題を起こす可能性があります。
というのもオバマ大統領の改革が実際に施行されることになると、民間保険会社の吸収合併や倒産が余儀なくされる可能性が高いわけですが、グアムのようにとても小さな社会では、グアムの政治、経済などの中核をなす“ビッグ・ファミリー”が保険会社を経営していて、もし倒産というようなことになった場合、島への打撃がとても大きいと予想されるからです。
万人に喜ばれる医療保険制度は存在し得ないでしょうが、それでもぜひ現在のアメリカの保険制度に改革を起こしてもらえたらと思います。
*『地球の歩き方』グアム特派員記事はこちらで。
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